おざなりの使い方5選!なれない言葉も意味をしっかり理解して使ってみようについて
「おざなり」という言葉を小説やドラマなどで目にすることも多いでしょう。

しかし、なんとなく意味は分かっても日常生活で使う機会はそれほど多くないため、実は正確な意味を知らないままでなんとなくスルーしてしまっているという人も多いのではないでしょうか。

また、似た言葉である「なおざり」との使い分けが分からず、どうしても使わなければならない際には毎回調べて使っているため、意味は分かっていても使い分けが身に付いていないという人も少なくはありません。

そこで「おざなり」の意味や語源、使い方だけではなく「なおざり」の語源も含めて両者の使い分けや違いを解説していきます。

また、「おざなり」に関して今までよりもさらにバリエーション豊かな使い方ができるように、類語やおざなり以外の間違いやすい言葉の意味に関しても解説していきます。

「意味はなんとなく分かるけど、実際に自分が使う自信はない」と思われがちな「おざなり」という言葉に関して、この機会に苦手意識を克服していきましょう。

おざなりとは

まずは、「おざなり」という言葉について語源から意味を理解していきましょう。

語源を確認すると、今まではひらがなで認識していなかった言葉を漢字で認識できることもあり、簡単に意味が覚えられることもあります。

「おざなり」に限らず、分からない言葉やどうしても意味や使い分けが覚えられない言葉がある場合は語源を確認してみるのもおすすめですよ。

語源は「御座なり」

「おざなり」の語源を確認すると、漢字で表記した時に「御座なり」という表記になることが分かります。

日常的に小説などを読む人でもこの表記を知らない人は多いかもしれませんが、実はこれはこのまま「座ったまま」という意味を持つことを示します。

何かを頼まれた時に、立ってその頼み事を遂行するのではなく、自分の手の届く範囲のみで座ったままに対応するような様子を「御座なり」と表し、それが時を経てひらがな表記の「おざなり」となったのです。

この語源を知り、座ったままで頼まれ事にあたる様子を想像してみると、いつもは意味が分からなくなってしまいがちな「おざなり」の意味も理解しやすくなるのではないでしょうか。

その場しのぎのいい加減な言動

頼まれ事をする時に立って動くのではなく、自分の座った状態で手の届く範囲でしか対応しないことを「おざなり」といいます。

語源を見ると、仮に立たないと必要な道具が手に入らない状況でも、面倒だと思って座ったまま適当に対応する人が思い浮かぶのではないでしょうか。

そのイメージ通り、「おざなり」には「その場しのぎのいい加減な言動」という意味があります。

頼みごとに対して座ったままで対応していて、周りの人から「本当にそれで良いの?」と確認されても「あぁ、大丈夫大丈夫」といい加減な対応しかしない人を想像すると、漢字と一緒に意味も理解しやすくなるのではないでしょうか。

形ばかり取り繕った言動

「おざなり」は「その場しのぎのいい加減な言動」という意味だけではなく、実はそこから派生したもう一つの意味を持つ言葉です。

おざなりのもう一つの意味としては「形ばかり取り繕った言動」という意味もあります。

先ほどのイメージを思い出してみると「それだと間違ってるんじゃない?」と言われても「大丈夫、これで良いんだから気にしなくて良いって」と、その場の追及を逃れようとする人を思い浮かべることができるでしょう。

本当は間違った対応なのに、周りからの追及を逃れるためだけの言い逃れを「おざなりな態度」ということもあります。

いずれにせよ、自分でも間違っていることが分かっているのに面倒くさいなどの理由で誠実な対応をしないことを「おざなり」と表現することがあるようです。

「自分でも立って作業しなければならないと分かっているのに、疲れているという言い訳で適当に作業する」と、語源である「御座なり」と一緒に覚えると良いのではないでしょうか。

おざなりの使い方5選

5選
語源としては「立ってやるべきことも適当に座ったまま行う」という意味を持つことから、そこから派生して「その場だけを取り繕う」という意味も持つのが「おざなり」という言葉です。

では、実際に生活していく上で「おざなり」という言葉を使う場合はどのような使い方が正しいのでしょうか。

言葉の意味を覚える際には、語源や漢字表記を覚えることによって覚えやすくなる場合と、使い方として例文を数個覚えることで使っている状況のイメージを持ちやすくなり覚えられる場合があります。

語源を覚えてもどうしても「おざなり」という言葉の意味を覚えられないという人は、今から紹介する5つの例文もチェックしてみてください。

1:おざなりな仕事は会社の評判を下げる

あなたがどこかに買い物に行った時、店員さんが商品を放り投げるように陳列していたり、あるいは誰かお客さんに頼まれごとをされたのにダラダラと不満そうに歩いている様子を見たらどう思うのでしょうか。

そこにどれだけ素敵な商品があっても「今度からは違う会社の商品を買おう」や「この店舗じゃなくて、違うお店で買い物をしよう」という気持ちになることもあるでしょう。

そうした態度を示して「おざなり」と表現することもあります。

「おざなりな仕事をしていると、会社の評判が下がってしまうからしっかり働くように」と指導された経験を持つ人もいるのではないでしょうか。

この例からも分かる通り、「おざなり」には「いい加減」という意味があります。

自分が疲れているから、やりたくない仕事だから、プライベートで嫌なことがあったから、という理由でおざなりな仕事はしないように注意しましょう。

2:彼とのデートはおざなりな内容で退屈だった

デート
「おざなり」という言葉が使われるのはビジネスシーンだけではありません。

たとえばあなたが誰かに告白されて初デートをする時「エスコートするから期待しててよ!」と言われると当日はわくわくして待ち合わせ場所に向かうでしょう。

それなのに、相手の男性が寝坊して待ち合わせに遅れたり、エスコートしてくれると言っていたはずなのにお店の予約をしていなかったり、挙句の果てに行き先も決めていなくて当日あなたに丸投げするようなデートをされるとどう思うでしょうか。

その人と付き合うのはやめよう、という気持ちになる人もいるでしょう。

このように、「おざなり」は「適当」や「いい加減」という意味で使われることもあります。

「しっかりプランを立ててくれると約束してくれたのに、おざなりな内容のデートだったから途中で帰りたくなった」のように使うことも珍しくはありません。

3:おざなりな接客をされて不快になった

ビジネスシーンでの使い方としては、やはり最初の例に挙げたように「おざなりな接客」という使い方が最も多いでしょう。

営業が取引先でダラダラした態度を見せることで「あそこの会社とはもう二度と取引したくない」と思われることもありますが、やはり使われる場面としては接客シーンの方が多いと言われています。

特に自分が普段から利用している店舗であればあるほど、その店舗でたまにおざなりな接客をされてしまうと「普段は良かったのに」というギャップも手伝って「二度と行きたくない!」という気持ちになる人が多いようです。

自分の具合が悪い時やシフトの終わり時間が迫っていると集中力がそがれてしまいがちですが、おざなりな態度で接客しないように注意していきましょう。

4:おざなりな言い訳を繰り返す彼女は信用できない

言い訳をする女性
ここまでで紹介してきた「おざなり」の使い方としては「いい加減」という意味が多くなっていましたが、もちろん今でも本来の意味である「その場しのぎの言動」という意味で使われる場面もあります。

その使い方としては「おざなりな言い訳を繰り返す彼女は信用できない」などの使い方があるでしょう。

友達と約束していた日にドタキャンされて理由を聞いたのに、聞くたびに「家族が倒れた」や「自分の具合が悪かった」などその場しのぎの返答をされると信用できなくなってしまうのも当然です。

「家族が倒れてもLINEくらいはほしかった」や「自分の具合が悪かったなら治った時に一言ほしかった」など、要望を言うたびに怒らせまいとするのか言い訳を変えるような態度をとる友達は、おざなりな態度が信用できないと感じられるのではないでしょうか。

5:おざなりな返事をして友達を怒らせてしまった

誰かにおざなりな接客をされて不快な思いをしてしまうこともあれば、おざなりなデートプランを提示されたりおざなりな言い訳ばかりをされたりして、相手に失望してしまうこともあります。

しかし、当然ながらあなたが失望するだけではなく、あなた自身がおざなりな対応をすることで周りの人を怒らせるリスクもあることは覚えておかなければなりません。

たとえば友達からどこかに遊びに誘われた時、まだ行けるか分からないからといって適当な返事をしていることはないでしょうか。

「○日までは予定が分からない」と明言すれば良いのに、おざなりな返事をしてしまうと信用を失って怒らせてしまう恐れがあります。

周りの人を怒らせないようにと思っておざなりな対応をしても逆効果となることが多いので気をつけなければなりません。

「おざなり」と「なおざり」の違い

違いを解説する人
「おざなり」という言葉の意味は「その場しのぎの言動」や「いい加減で不誠実な言動」など、だいぶイメージしやすくなったのではないでしょうか。

しかし、多くの人が混同してしまいがちな言葉として「おざなり」と「なおざり」という言葉があります。

この言葉は、四文字の順番が同じというだけではなく少し意味も近いため、どうしても意味を混同してしまいがちだと言われています。

そこで、「おざなり」と「なおざり」をしっかり使い分けるためにも、「なおざり」の語源や意味を「おざなり」と同じようにチェックしてみましょう。

なおざりの語源は「猶去り」

「おざなり」を漢字で表記すると「御座なり」となりましたが、「なおざり」は「等閑」あるいは「猶去り」と表記することができます。

それぞれの意味を見てみると「等閑」は「長閑なままにしておく」や「猶去り」は「(何か問題が起きていても)猶、そのまま去っていく」と解釈することができるでしょう。

すなわち、「なおざり」は何かトラブルが起きている様子をしっかり把握しているにも関わらず、それでもなお自分でそれに対処しないどころか、そのトラブルを横目に自分だけがその場を立ち去り、自分だけのどかな状態を維持するというイメージができるのです。

なおざりは「いい加減に扱って対応しないこと」

トラブルが起きていてもなお、自分でそれに対処することなくその場を去るという語源を持つなおざりは、その由来の通り「何があってもいい加減にしておいて、対応しないこと」という意味があります。

すなわち、自分が対処すべきことがあるのに対応しないことを「なおざりにする」というのです。

たとえばクレームのメールが届いていて、すぐに対応するか上司に報告しなければならないのに、対応が面倒だったり上司に怒られたりすることが嫌だからとメールを見ないふりをするような行動を「なおざりな行動」と表現することができます。

なおざりな行動をしてしまうと、その場では快適に過ごせたつもりでも後からさらに大きなトラブルの原因となる恐れがあるので注意が必要です。

「おざなり」と「なおざり」を使い分けるコツ

コツを教える女性
それぞれの語源や意味を理解していても、「おざなり」と「なおざり」をいざ使い分けてみようとすると自信がないという人もいるでしょう。

しかし、そこでいつまでもネットで検索しながら使っていては言葉を身に付けることはできません。

ここで、もう少し踏み込んで「おざなり」と「なおざり」をしっかり使い分けるコツを二つチェックしてみましょう。

何かしらの対応をしているか

響きが非常に似ている二つの言葉ですが、実は「何かしらの対応をしているか」ということで使い分けることができます。

たとえば「おざなり」は「その場しのぎの言動でその場を切り抜けるための対応をする」という意味です。

例文を思い出してみると、デートプランができていなくてもデートをドタキャンすることはありませんし、友達から追及するLINEが来ていてもブロックして逃げようとすることはありません。

しかし一方で、「なおざり」は「その場のトラブルを認識していてなお、その場からさること」です。

そのため「おざなり」の例文に当てはめてみるとデートプランができていない場合はその場に来ることもしませんし、友達からLINEが来ていても見ないふりをして無視をするのが「なおざり」となります。

不誠実であっても一応なんらかの対応をするのが「おざなり」で、全く対応せずに逃げ出して去るのが「なおざり」と覚えると使い分けしやすくなるのではないでしょうか。

語源の漢字からイメージする

音の響きが似ていても全く違う意味を持つ二つの言葉を使い分けるためには、やはり語源の漢字をイメージするのが最も分かりやすいと感じる人も少なくはありません。

「おざなり」の語源である「御座なり」は「座ったままで適当に対応する様子」をイメージできる漢字となるでしょう。

一方、「なおざり」の場合は「猶去り」と既にその場を立ち去っているので、何も対応することなく逃げ出して去ってしまっている様子をイメージすることができます。

全ての間違いやすい言葉が漢字をイメージすることで覚えやすくなるわけではないですし、そもそも漢字表記ができない言葉も少なくはありません。

しかし少なくとも「おざなり」と「なおざり」の場合は「猶去り」の去っている語源を知ることで「対応しているかしていないか」を見分けることはできるでしょう。

今まで漢字表記に苦手意識を抱いていた人も、ぜひ「おざなり」と「なおざり」に関しては漢字からイメージしてみてください。

おざなりの類語

「おざなり」という言葉には、今までの例文で少し解説してきた通り類語が存在しています。

おざなりという言葉を使うことに自信がない場合は、こちらの類語に言い換えて使うことで自分でも自信を持って分かりやすい文章を作ることもできるでしょう。

ここでは、「おざなり」という言葉と似た意味を持つ言葉を五つ紹介していきます。

適切な場面で分かりやすく言葉を使いこなすためにも、こちらも覚えておきましょう。

いい加減

「おざなり」は「座ったままで対応する」という語源を持った言葉です。

そのため「いい加減」という言葉も「おざなり」と似た意味を持つ言葉となるでしょう。

「浮気したのか疑っているのに、彼氏がおざなりな言い訳ばかりするから全く信用することができなくなってしまった」という言葉も「浮気したのか疑っているのに、彼氏がいい加減な言い訳ばかりするからもう信用できない!」と言い換えることができます。

「おざなり」という言葉を使うと少し口語的な印象になってしまいますが、「いい加減」という言葉なら日常的にも使いやすく感じられるのではないでしょうか。

無理に「おざなり」という言葉を使わず、普段から使いやすい「いい加減」という類語で置き換えるのも決して悪いことではありません。

ぞんざい

「座ったままで適当に対応する」ということが「おざなり」という言葉の意味ですので、「ぞんざい」という言葉に言い換えることもできるでしょう。

「ぞんざい」もそれほど日常的に使う言葉ではありませんが、「ぞんざいな扱い」のような使い方を聞いたことがあるという人も多いのではないでしょうか。

「ある店に行ったら、店員がぞんざいに商品を扱っていたので不快な気持ちになってしまった」のような意味で使うことができる言葉です。

「おざなりに商品を扱っていた」あるいは「いい加減に商品を扱っていた」というように言い換えても不自然ではないことが分かるでしょう。

「おざなり」も「ぞんざい」もそれほど使う言葉ではありませんが、一つ覚えておくのも良いかもしれません。

「ぞんざいな扱い」が「おざなりな扱い」と同じ意味で使われることを知ると、「おざなり」の類語として「雑」という単語をイメージする人も多いのではないでしょうか。

実際、「雑」も「おざなり」と近い意味で使われることが多い単語です。

「おざなり」の語源となっている「御座なり」をイメージすると、誰かに頼まれたことを座ったままで雑に対応している人をイメージすることもできるでしょう。

そのイメージ通り、「おざなりな対応をされて憤慨している」という言葉は「雑な対応をされて憤慨している」という言い換えをすることが可能です。

しっかり誠実に対応するのではなく、その場をしのげれば良いという気持ちで適当な行動をしたり、その場を乗り切るためだけの雑な言い訳ばかりをしていると「おざなりな対応ばかりをする信用できない人」という評価を下されてしまうこともあるかもしれません。

空々しい

実は「おざなり」には「空々しい」という意味もあります。

「空々しい」はそもそも「言動に誠意がなく、見え透いていること」という意味を持つ言葉ですが、これは「おざなり」の「適当な対応」という意味よりも「その場しのぎの言動」という意味に近い類語だと言われています。

「何かをごまかしていることがバレバレな空々しい嘘を言うのはやめなさい」というように「何かをごまかしているのがバレバレなおざなりな態度はやめなさい」と使うことができるでしょう。

「空々しい」も「ぞんざい」と同じように、小説やドラマではよく見かけるものの実生活ではそれほど使う機会の多い言葉ではありません。

しかしながら、意味はイメージしやすい言葉だと言われているので、「おざなり」の類語として「空々しい」を覚えておくのも良いのではないでしょうか。

適当

ここまで「いい加減」や「ぞんざい」、「雑」や「空々しい」という「おざなり」の類語を紹介してきましたが、やはり一番使いやすい「おざなり」の類語といえば「適当」という言葉でしょう。

「おざなりな言い訳をしていて彼氏を怒らせてしまった」は「適当な言い訳をしていて」と言い換えることができますし、「おざなりなデートプランを提示されて嫌な気持ちになった」や「適当なデートプランを提示されて」と言い換えることもできます。

他にも「適当な態度で接したことがバレた」は「おざなりな態度で接したことがバレた」と使うこともできるでしょう。

「ぞんざい」や「空々しい」という言葉は日常会話で使う機会は少なく、また「雑」や「いい加減」などはビジネスシーンでは不適切とされることも多い言葉です。

しかしながら「適当」という表現でしたら日常会話でもビジネスシーンでも違和感なく使うことができます。

もし「おざなり」の類語を一つ覚えておこうと思うのであれば、使いやすい「適当」を覚えておくと良いでしょう。

おざなり以外にもある意味を間違いやすい言葉

「おざなり」自体がそもそも聞き慣れずに意味が分かりづらい言葉として有名ですが、さらに似た意味と響きを持つ「なおざり」という言葉の存在で、さらに「おざなり」という言葉の理解が難しくなっています。

しかし、実は「おざなり」と「なおざり」以外にも似た響きを持っているからこそ間違いやすく多くの人が混乱してしまう言葉が存在していると言われています。

最後に「おざなり」以外にも間違いやすい言葉のセットを6つ紹介していきます。

こちらも一緒に意味や使い方をチェックして、今後は正しく使えるようにしていきましょう。

「失笑」と「苦笑」

「失笑」は「笑ってはいけないような場面なのに、あまりにも面白くて思わず吹き出してしまうこと」を意味する言葉です。

笑ってはいけないという意識を「失」くして「笑」ってしまうのが「失笑」と覚えると覚えやすくなるのではないでしょうか。

その失笑と間違いやすい言葉として「苦笑」という言葉もあります。

「苦笑」は「にがわらい」という読み方の通り「他人や自分の置かれた状況が滑稽で愚かすぎて、不快感を持ち戸惑いながらも仕方なく笑うこと」という意味を持つ言葉です「「苦」々しい気持ちを持ちながらも、それしかなくて「笑」っている」と覚えれば良いでしょう。

会議で上司が噛んでしまっている時に、真剣な場面だから抑えようと思っていても笑ってしまうのが失笑で、真剣な会議なのに準備をしていない後輩社員に対してイラ立ちの気持ちで口角を少しだけ上げるのが苦笑です。

言葉の見た目は似ていても使う場面は大きく違うので注意してください。

「青田買い」と「青田刈り」

次に間違いやすい言葉として知られている「青田買い」は「まだ稲が青いのに収穫量を見越して田んぼを購入すること」を意味します。

その意味から派生して「まだ大学二年生なのに内定を出す」など、一般と比べて早すぎる契約をすることを「青田買いをする」と表現することもあります。

一方「青田刈り」は戦国時代に用いられた戦法の一つです。

敵の城の周りにある稲を、まだ青いうちに刈ることで相手を兵糧攻めにすることを「青田刈り」と言います。

すなわち自分たちのためにやることを「青田買い」、逆に相手を困らせようと思ってやることを「青田刈り」と言います。

音の響きが似ていますが、意味は全く違うので混同しないように気をつけましょう。

ただし、現在では「青田刈り」という言葉はそれほど使われないので、「青田買い」の正しい意味だけを覚えておけばそれほど不自由することはないかもしれません。

「口先三寸」と「舌先三寸」

「口先だけで相手を騙してしまうこと」という意味を持つ言葉として「口先三寸」という言葉を聞いたことがある人も多いのではないでしょうか。

「オレオレ詐欺は口先三寸でお金を騙し取る」や「口先三寸の口説き文句で浮気に巻き込まれてしまった」などの使い方をする人も少なくはありません。

しかし、実はこの「口先三寸」は間違った使い方だと言われています。

本来は「舌先三寸」が正しい使い方です。

「口先だけで騙す」という意味から「舌先三寸」ではなく「口先三寸」という言い方をしている人が多くなっているのです。

実際、現在では「口先だけで相手を騙してしまうこと」という言葉に対して「舌先三寸」が正しいと思っている人は二割程度で、半数以上の人は「口先三寸」という言葉を使っているとのデータもあります。

現在では「本来では舌先三寸が正しく、口先三寸は広く知られているだけで誤用である」という事を知っている人も多いですが、もしかしたら今後は「口先三寸が正しい言い方」というように変化していくかもしれません。

「役不足」と「力不足」

「彼には課長では役不足だ」と「彼には課長では力不足だ」という文章があった時、正確に二つの文の違いを説明できるでしょうか。

本来は「役不足」は「役自体が不足している」という意味のため「彼には課長では役不足だ=彼は部長くらいがふさわしい」という意味を持ち、逆に「力不足」は「実力が不足している」として「彼には課長では力不足だ=係長程度にとどめておこう」という意味を持ちます。

しかし、現在では「役不足」を「役者として不足している」と認識し、「役不足」も「僕には課長なんて無理です」のように力不足と同じ意味合いで使っている人も少なくはありません。

今はまだ正しい意味で使っている人も多いですが、もしかしたら今後「舌先三寸」のように正しい意味が忘れられていく可能性もあります。

「御社」と「貴社」

こちらの「御社」と「貴社」に関しては、最近就職活動や転職活動を経験した人であればピンときやすい使い分けかもしれません。

「御社」も「貴社」も同様に相手の会社に対する敬意を表現する言葉ですが、「御社」は口頭で使う言葉であり「貴社」は文面で使う言葉というような違いがあります。

すなわち、電話などで「今度御社にうかがわせていただきたく思っております」と話した後、改めてメールで日程の打ち合わせをする際には「先ほどお話しした貴社にうかがう日程に関してですが」のように「御社」と「貴社」を使い分けていく必要があります。

この「御社」と「貴社」の使い分けに関しては普段からビジネスシーンで使うことも多く、多くの会社が新入社員研修などで教えることから「失笑」と「苦笑」や「青田買い」と「青田買い」よりも間違える人が少なく、正しい意味で使用しないと恥をかいてしまうこともあるので注意しましょう。

「ご教授」と「ご指導」

最後に「ご教授」と「ご指導」についても見ていきましょう。

「ご教授」は学問や技芸を教えてもらう時、相手の知識に対して敬意を払う際に使われる言葉です。

すなわち、教授などに専門的な内容を教えてもらう時には「ご教授ください」と頼むと良いでしょう。

一方、「ご指導」は「教えてもらった事実」に対して敬意をはらう際に使われる言葉です。

つまり、質問の前に「○○についてご教授ください」と依頼をし、終わった後で「ご指導いただきありがとうございました」とお礼を述べるのが正しい使い方です。

なお「ご指導」だけではなく「ご指導ご鞭撻いただき」というように使うこともあるので、こちらも覚えておくと良いでしょう。

さらに「ご教授」と似た言葉に「ご教示」という言葉もあります。

これは「学問や技芸を教えてもらう時」に使うご教授とは違い「知識や方法を教えてもらう時」に使う言葉となります。

つまり「やり方を教えてください」を丁寧に表現する時に「ご教示ください」となるのです。

「ご教授」・「ご指導」と合わせて「ご教示」の使い方も覚えていくと良いでしょう。

おざなりの意味をしっかり理解しよう

「おざなり」や「なおざり」など、意味が分かりづらく似ている表現は少なくありません。

こうした言葉は使うこと自体を避けてしまいがちですが、正しい意味を覚えると表現の幅が広がるので積極的に覚えていく方が良いでしょう。

語源や類語、使い方などと一緒に覚えると覚えやすくなるので、ぜひしっかり理解して使い分けてみてください。